TEXT BY レタリーマガジン編集部
企業の新規開拓戦略において、他とは一線を画すアプローチとして注目を集める手紙施策。デジタルコミュニケーションが主流となった現代において、手書きの温もりや上質な紙の質感は、受け取った相手に特別な印象を与え、その後の関係構築においてアドバンテージをもたらします。しかし、その効果を最大限に引き出すためには、表層的な理解だけでなく、綿密な準備と戦略的な実行が不可欠です。
本稿では、手紙営業を始める前に、企業の担当者が深く掘り下げて検討すべき3つの重要な準備段階と、その後のスムーズな運用、そして成果へと繋げるための実践ステップを、具体的な事例を交えながら詳細に解説します。
手紙施策の導入を検討するにあたり、まず避けて通れないのがコストの問題です。「手紙は費用がかかる」というイメージが先行しがちですが、重要なのはその費用対効果を他の新規顧客獲得施策と比較し、総合的に判断することです。そのためには、現状の営業戦略における全体コストを詳細に算出し、どの施策がどれだけの成果を上げているのかを「見える化」することが最初の重要なステップとなります。
まずは、現在実施している主要な新規開拓施策にかかっているコストを、可能な限り細かく洗い出します。
これらのコストを算出し、各施策からどれだけのアポイントメント、商談、そして最終的な受注に繋がっているのかを分析します。これにより、「1アポイント獲得単価」や「顧客獲得単価(CAC)」を明確にすることができます。
手紙施策の場合、主なコストとしては以下のものが挙げられます。
これらのコストは、DMなどの大量送付型の施策と比較すると、一件あたり高くなる傾向があります。しかし、その分、以下のような効果が期待できます。
これらの定性的な効果も考慮に入れ、手紙施策が自社のターゲット層に対して、他の施策よりも高いエンゲージメントや信頼感を獲得できる可能性があるのかどうかを見極めることが重要です。
現状のコスト構造と手紙施策の可能性を比較検討した結果、もし手紙施策が有望であると判断されたならば、まずは限定的な範囲でテスト的に実施し、その効果を測定することをお勧めします。初期投資を抑えつつ、実際の反応を見ることで、本格導入の判断材料とすることができます。
手紙施策は、その特性上、誰にでも送れば効果が出るというものではありません。むしろ、ターゲットを明確に絞り込み、そのターゲットに最適化されたメッセージを送ることで、初めてその真価を発揮します。自社が「投資をしてでも獲得したい」と考える理想の顧客像を具体的に描き出すことが、手紙営業を成功させるための重要なステップとなります。
まず、自社のビジネスゴールを再確認します。どのような顧客を獲得することが、売上向上、利益率向上、市場シェア拡大などの目標達成に最も貢献するのかを明確にします。その上で、以下のような項目に基づいて、理想の顧客像(ターゲットペルソナ)を詳細にプロファイリングします。
手紙施策は、郵送コストや作成にかかる手間を考慮すると、決して安価な施策ではありません。そのため、費用対効果を最大化するためには、「無駄にしてでも取得したい」と考える戦略的な顧客層に焦点を当てるべきです。
これらの顧客層に対して、パーソナライズされた手紙を送ることで、他の営業手法では難しい深い関係性を構築し、商談へと繋げる可能性が高まります。逆に、それ以外の顧客層に対しては、より効率的なコールドコールやメールマーケティングなどを検討する方が合理的かもしれません。
【データに基づいた客観的な判断】ターゲット選定における注意点
ターゲット層を選定する際には、担当者の主観や過去の経験だけでなく、可能な限りデータに基づいた客観的な判断を心がけましょう。既存顧客の分析データや市場調査データなどを活用し、本当にアプローチすべき顧客層を見極めることが重要です。
手紙施策を成功させるためには、質の高い手紙を作成し、適切なターゲットに送付するだけでは不十分です。その後のフォローアップや効果測定、そして組織全体での情報共有を円滑に行うための導線設計が非常に重要となります。
手紙施策を開始する前に、以下の項目について具体的なプロセスと担当者を明確に定義します。
手紙施策で得られた情報をSFAと連携させることは、その効果を最大化し、組織全体の営業効率を高める上で不可欠です。
導線設計は、一度行ったら終わりではありません。実際に手紙施策を運用していく中で、課題や改善点が見えてくるはずです。定期的に効果測定の結果を分析し、PDCAサイクル(Plan→Do→Check→Action)を回しながら、施策を継続的に改善していくことが、手紙営業で成果を出し続けるための重要な要素となります。
手紙施策は、デジタル化された現代において、顧客との深い繋がりを築き、新規開拓を成功させるための強力なツールとなり得ます。しかし、その効果を最大限に引き出すためには、事前の徹底的な準備、明確なターゲット設定、そしてスムーズな運用を可能にする導線設計が不可欠です。
そのために必要なことは、Lettery(レタリー)のような手紙SaaSなどのサービスや手紙施策の相談相手の存在と言えるのではないでしょうか。弊社では、上記のような相談から乗らせていただくことが多いです。ぜひこれから手紙施策を開始されようとされている人、まさに実行している人など、ぜひご相談くださいませ。
次の章では、手紙施策においてよく起きがちな失敗談を紹介していきます。